東方起源

  やっぱ、日本人みんな同じに見えるからな 
    ― All Japanese look the same to you. ―

あからさまにいってしまえば、「武」なんぞは「問題」にしたくもなければ、「関心」にしたくもないのである。しかるに、どうしたわけか知らないが、まあ愚衆に支えられてのことにはちがいないのだが、つねにいちばん目立つところに、そして至るところに存在するのが、「武」というわけなので、「それ」を目撃するたび、かつてその「武」によって「豆タンク」と渾名され、現れるや忽ちはかなく撃沈の憂き目を見せられて、全国的に恥をかかされた苦い思い出が甦ってくるので、どうしても思わず呻き声をあげてしまうことになる西部邁は、つねにその「豆タンク」に私怨を溜め込んで、それを空疎な腐説に任せておもいっきりひり出すことを、おのれの余生にしているのだが、オレはなんだって「武」の番組なんかにノコノコ出向いて行きなどしたのか、あの時、オレはやはりどうかしていたんだなどと後悔したところで、当然のことながらすでに取返しがつくものではなく、愈々その根源的「トラウマ」に発した民衆憎悪も募るばかりという次第で、もはやその空疎な冗舌もとどまるところを知らず、かくしてあらゆる民衆運動を、したがってまた民衆の「知的・道徳的関心」を空疎化しないではいられないという点で、否が応でも、かの「糞掻き棒」(=空疎書き暴)こと蓮實重彦の存在とオーヴァーラップしてくる西部の「それ」は、まさに「紋切型辞典」にも当然のことその端的な記載を確認できるであろう、まったくうんざりするというほかはない、「老醜」以外のなにものでもなかろうから、やはり、われわれ下根の者に必要なのは、「みやび」批判ということにならざるをえない。

ところで、つい最近、「丸山眞男話文集 2」(みすず書房)を読んで知ったのだが、キリスト教は、ヨーロッパにとって、「オリエント」に発する外来思想であるということらしい。だとすれば、それは、『HANA-BI』(1997)において、その銀行強盗の「略取」が明らかな「質」を孕むとき、われわれが、そうした「交換様式」が何処に淵源するものであるかを考えるときの手懸りとなるであろう。それは「今時」によっては、けっして意識化しえない「国家」の「起源」というべき瞬間であって、対外的な「危機」においてわれわれを不意打ちする。さらに、グローバルな共時性ということからいっても、「オリエンタル・デスポティズム」(「東洋的専制主義」=「HAN」)は決して過去のものではない。一方、「弐」(BI)のエゴイズムは、「オイラがキリストだ」といって憚らぬほどに強烈であり、実際、『BROTHER』(2000)では、全人類に向けての「それ」(贈与don)がすでに実行に移されている。「オイラ」は平和をもたらすためではなくて、敵対をもたらすために到来したのだ。そして、そこで「武」に付き纏う「強い視差」こそが、共同体と共同体の間に発生するところの「ハイフン」(私は疑いつつ在る)にほかならない。

丸山のいう「プルーラルな諸身分があるところに初めて抵抗権がある」とは、つまり「複数体系」としての「武」こそが集権化に抵抗するということである。そして「武」の「時勢遅れ」が畢竟そうした「身分」からきていることは『BROTHER』をみれば一目瞭然である。実際、そこで冒頭から「武」が「突っ立っている」のも、そうした「身分」(Stand)の存在を告げるためにほかならない。とはいえ、丸山の証言(「忠誠と反逆」1960 <5 信徒と臣民> ちくま学芸文庫)だけでは不足だというのであれば、玉野井芳郎の「ヘルシャフトとゲノッセンシャフト」(1975)における「横の<団結>の力」の強調をも参照するがよかろう(『エコノミーのエコロジー』 みすず書房)。そして結局、われわれはどうあっても柄谷行人を読まねばならない。たとえば、「歴史と自然 ―鷗外の歴史小説」(1974 「意味という病」 講談社文芸文庫)や「中野重治と転向」(1988 「ヒューモアとしての唯物論」 講談社学術文庫)をみれば、「封建的人間」や「身分」こそが、「今時」の集権化(「一系」)に「抵抗」するということがわかるだろう。 

かくして、北野武の最新作のタイトルが、『アキレスと亀』(2008)であるのが、いい加減な思いつきなどとはまったく無縁の、「政治思想」の現れにほかならぬことは明らかである。そもそも、「武」に自由意志などというものは存在しない、いいかえれば、「武」は「互酬原理」によって突き動かされている、のであるから、それが「ギリシア」起源であるのも至極当然のことなのである。権力の集中する場所(官僚主導であれ政治家主導であれ)に「くじ引き」を導入するという一見すると「出鱈目」な発想さえも、そこに淵源するのだ。

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